文献リスト集
1.研究課題(リサーチクエスチョン)の整理表
氏名:坂本充(2002)_________________
研究テーマ:_分かりにくいのに使われる外来語〜放送と外来語全国調査(1)〜
背景(動機・先行研究) |
リサーチクエスチョン/仮説 |
指標・データ収集方法・分析方法 |
得られた(あるいは予想される) 結果 |
現在、外国母・外来語はこれまでの出版物の改定が間に合わない速度で増えている。使用の適否について、放送現場からあの問い合わせも多い。そのため、その基礎資料とするために調査する必要である。 |
RQ1-aテレビや新聞で、外国語や外来語が多く使われていると思うか。 RQ1-b外来語・外国語がどの分野で多く使われるか。
RQ1-c外国語・外来語をすすんで取り入れているのはどこだと思うか。
RQ1-d誰が多く使っているのか。
RQ1-e外国語・外来語が多用されることについてどう感じるか。
RQ1-f外国語や外来語の意味が分からなくて困った経験があるか。 RQ1-g和製英語は便利な単語なのか。 RQ1-h外来語・外国語の省略形について賛成するか。 RQ1-iアルファベットの省語の犯濫に対してどのように意識しているか。 RQ1-j外来語・外国語の今後は増えていくのか、それとも減るか。 RQ1-k外来語・外国語が増えることについて賛成か、反対か。 RQ1-l外来語使用は自粛すべきか RQ1-m外来語の使用を自粛するとすれば、メディアや公的機関企業など、どこが規制を強めたらよいと思うか。 |
対象者に外来語・外国語に対する意識に関する設問の13題を調査した。%に分析する。
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RQ1-a全体平均で78%、の人が多いと答えた。
RQ1-b広告・CMの分野が最も多く使われるという回答が62%である。 RQ1-c放送局と広告業界という回答が60%である。
RQ1-dアナウンサー・記者、歌手・タレントという回答が45%である。 RQ1-e「意味が分かりにくくなる」が50%で、外来語を使うことに抵抗感を覚える回答が多い。 RQ1-f困った経験があるのが80%である。 RQ1-g和製英語はやむをえないという回答が55%である。 RQ1-h肯定的な回答が58%である。 RQ1-i説明があれば使ってもよいとする回答が36%である。
RQ1-j外来語が増えるのは当然であるとする回答が62%である。 RQ1-k賛成の意見が47%である。
RQ1-l反対の回答が多い。 RQ1-m自粛することはないという回答が39%である。 |
調査概要
調査時期:2002年3月8日〜3月11日
調査対象:満20歳以上の男女2000人
抽出方法:層化2段無作為抽出法
調査方法:調査員による個別面接聴取法
調査有効数(率):1295(64.8%)
2.研究課題(リサーチクエスチョン)の整理表
氏名:_篠原みゆき(2002)________________
研究テーマ:_日本語の外来語におけるアクセントと音節構造(特殊モーラとアクセントの関連性)____________________
背景(動機・先行研究) |
リサーチクエスチョン/仮説 |
指標・データ収集方法・分析方法 |
得られた(あるいは予想される) 結果 |
アクセントにゆれがある語の場合は、従来の研究の分析したことから予測できない位置にアクセント核が置かれている。また、このアクセントのゆれは先行研究が分析した結果と異なりほとんどLHLで終わる。そのため、ゆれの現象は新たな分析が必要となる。 |
RQ1-a LHLで終わる音節構造を持ち、従来の分析では予測されないアクセントを持つ語が、外来語全体の語彙数と比較して、どのような割合を占めているのか。 RQ1-b特殊モーラとアクセントの関連性はあるか。 |
『大辞林第二版』から、外来語7524語を抽出し、それぞれをアクセントおよび、モーラ数、音節構造ごとに分類した。アクセントの計算に必要であると思われる後ろから3つ目までの音節構造ごとに分けて、それぞれの音節構造が、どのようなアクセントを持っているのか数えた。 |
RQ1-a LHL#は、[−4]というアクセントを持つ語は11.4%とそれほど多くはないが、LHL#の語の中では2番目に多い。
RQ1-b 4モーラ目が特殊モーラに該当する場合[−4]にはアクセント核が置かれないが、一つ前の[−5]に多くの割合でアクセント核が置かれていることを考慮に入れるとHL#という音節構造とアクセントの関係がある。 |
記載なし
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RQ2-a LHLの語はどのように発音されるのか。
RQ2-b特殊モーラとアクセントの関連性はあるか。 |
語末にLHL#という音節構造を持つ語180語を無作為に抽出し、それを東京方言話者10名に、3回ずつ読み上げてもらい、それをDATで録音した。また、特殊モーラ別に分析した。 |
RQ2-a上記の結果と同様にあるいはそれより多くの語が従来のアクセント規則で予測される[−3]よりも前に位置にアクセント核が置かれることが多い。 RQ2-bそれぞれの特殊モーラごとにアクセントの分布が異なる。それぞれの特殊モーラにはアクセント計算において何らかの性質の差異がある可能性を示唆している。 |
参考
Lは軽音節、Hは重音節、#は語の終わりを示す。
[ ]で囲った数は、アクセントが置かれるモーラを示す。
−は後ろから数えていることを意味する。
本研究はHL#という音節構造の中でもLHL#という音節構造に的を絞って考察した。
3.研究課題(リサーチクエスチョン)の整理表
氏名:稲垣滋子(1991)__________________
研究テーマ:外来語表記の基準と慣用
背景(動機・先行研究) |
リサーチクエスチョン/仮説 |
指標・データ収集方法・分析方法 |
得られた(あるいは予想される) 結果 |
日本人および日本語学習者は基準あるいは慣用に従って表記するのかを調べる研究が進んでいない。実態を調べた上で単純化をはかる必要がある。
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日本人と学習者のそれぞれは基準に従って表記しているか、それとも慣用に従って表記しているか。 |
100語を原語の綴りで示し、それに最も自然だと思われるカタカナ表記で記入してもらう。 日本人と学習者の表記を考察して、国語審議会の「案」に示された項目を参考にして表記の種類ごとに整理して書き方の傾向を調べる。 |
日本人の場合の表記は、表記に対する姿勢と関係があるようである。学習者の場合、基準と慣用の使い分けがかなり容易であるらしいが、慣用の適用を一津にしてしまう傾向がある。英語以外の話者は基準または慣用に従って表記するのか判断できない。 |
記載なし |
日本人と日本語学習者の外来語の表記にどちらがゆれの割合が多いか。 |
100語を原語の綴りで示し、それに最も自然だと思われるカタカナ表記で記入してもらう。日本人のグループと日本語学習者のグループに分け、その語の書き方を調べ、それぞれのグループの人数に対するゆれの割合を探る。 |
学習者のほうがゆれが多い。日本人で1語平均3.42通り、学習者で6.39通りの書き方がある。 |
調査対象
日本人 :日本語教員養成講座の男女34名
日本語学習者:上級日本語を取っている男女13名(英語話者6名その他7名)
国語審議会の「案」に示された項目は次の通りである。
A 日本人・学習者とも「案」と同じご
B 日本人は慣用に従い、学習者は原音に近く書く語
C 日本人・学習者とも「案」と異なり原音に近く書く語
D 日本人は原音に近く、学習者は慣用の規則で書く語
E その他
4.研究課題(リサーチクエスチョン)の整理表
氏名:__坂本充(2002)______________
研究テーマ:_どうする?外来語の表記と発音〜放送と外来語全国調査_________
背景(動機・先行研究) |
リサーチクエスチョン/仮説 |
指標・データ収集方法・分析方法 |
得られた(あるいは予想される) 結果 |
「昭和29年報告」と「平成内閣告示」に載っている外来語の表記にゆれがある。放送するには、ほとんどの人が多く使用しているものにする必要がある。 |
RQ1-a英語の[v]表記の発音を「ハ濁」か「ウ濁」のどちらで表記するのか。 「バイオリン」か「ヴァイオリン」か
RQ1-b英語の[dea]や[di]表記の発音を「デ」か「ディ」のどちらで表記するのか。 「アイデア」か「アイディア」か
RQ1-c英語の[tic]表記の発音を「チック」か「ティック」のどちらで表記するのか。 「ロマンチック」か「ロマンティック」か RQ1-d英語の[ty]で終わる表記の発音を「ティ」とするのか、または、長音符号をつけて「ティー」とするのか。 「パーティ」か「パーティー」か |
個別面接聴取調査と、インターネットで公開されている新聞検査や「yahoo」「goo」「Google」の3つの検査サイトで使用頻度を調べ、それぞれの言葉の使われ方を比較した。結果を男女別年代別で分析する。 |
RQ1-a個別面接聴取調査で男女別、年代別で大きな差がないが、新聞検査では圧倒的に「ハ濁」である。インターネット検査ではほぼ半々の結果が出ている。 RQ1-b全体では「デ」のほうが多いが、30年代で「ディ」のほうが多い。新聞検査「デ」が圧倒的である。インターネット検査でも「Google」を除いて「デ」の表記が2倍から3倍近い結果が出ている。 RQ1-c個別面接聴取調査の結果全体では6割対3割で「チック」派が優勢であるが年代別で見ると、逆転する。新聞検査、インターネット検査でもこの傾向が出ている。 RQ1-d回答者全体では70%近くが長音のついていると支持している。新聞検査では圧倒的に長音符号をつけると答える対象者が多い。インターネット検査ではほぼ同程度。 |
放送文化研究所で、国民の外来語に対する考えに基づいて今後もNHKの放送で使用する外来語の基準を考えていく。
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RQ2-aなじみのある外来語の表記については、定着した表記の継続を望むのか、外国語(原語)の発音に近い表記にすることを望むのか。
RQ2-b外来語の発音について原音の発音に近づけたほうがよいと思うのか、発音しにくい音は日本語にある発音でかまわないと思うのか。 |
個別面接聴取調査を行う。外来語・外国語の発音と表記に関して実施する。結果を男女別、年代別に分析する。 |
RQ2-a結果は「従来の外来語の表記を継続資源音の発音に合わせるより日本人に発音しやすい表記を望む」という意見が8割である。しかし20年代の人は今後入ってくる外来語の表記については「原音に近い書き方にしたほうがよい」という。 RQ2-b「日本語にある発音でかまわない」と回答した人は全体平均では46%いたが、「外国語の発音に近づけたほうがよい」と回答した人のほうが20歳代から40歳代まではわずかに多い。 |
調査概要
調査時期:2002年3月8日〜3月11日
調査対象:満20歳以上の男女2000人
抽出方法:層化2段無作為抽出法
調査方法:調査員による個別面接聴取法
調査有効数(率):1295(64.8%)
5.研究課題(リサーチクエスチョン)の整理表
氏名:山下みゆき(1995)______________
研究テーマ:初級日本語学習者の外来語における日本語化規則の習得―長音・促音を中心に−__________________________
背景(動機・先行研究) |
リサーチクエスチョン/仮説 |
指標・データ収集方法・分析方法 |
得られた(あるいは予想される) 結果 |
英語母語話者にとっても外来語の習得が困難である。外来語の学習方法を考慮した研究が行われるようになっているが、学習者にとっては外来語が特に長母音化と促音挿入の規則はまだ問題点である。学習者のこの2つの規則の学習過程を把握して日本語教育現場に応用する必要がある。 |
英語母語話者は長音と促音に関する規則を初級の段階でどのように獲得していくか。 |
縦断的調査を行う。外来語の原語を15語与え、それらが外来語になった際の単語を推測させ発音、表記させる。学習者の正答率の推移、誤答の種類とその推移を発音、表記ごとに表にまとめ、考察する。発音と表記の不一致に関する表をまとめ、その傾向を探る。 |
長音の規則の場合、規則を正しく認識し、それをきちんと表記できる方向へ習得が進んでいる。誤答が段々減ってくる。発音と表記の不一致数は少ない。 促音の規則の場合、身につけるには難しい段階である。特に表記の調査での正答率が低い。発音と表記の不一致数は多い。 |
初級の英語以外の学習者の場合も英語が原語である外来語の学習困難点を把握する必要がある。
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中国語・韓国語母語話者が英語の原音を音韻的に日本語化の規則にどのように当てはまるか。 |
横断的調査を行う。データ収集方法・分析方法は英語話者と同様に行う。 |
長音の場合、英語においても日本語においても同じ母音で長音となる場合は両言語話者にとって推測しやすく正答数が高い。しかし、発音と表記の不一致数は両者に多く見られた。 促音の規則の場合、韓国語話者のほうが中国語話者より発音と表記のずれが大きいが、発音の正答率が高い。 |
対象者
初級の英語母語話者5名、中国母語話者10名、韓国語母語話者10名
調査時期
縦断的調査の場合:1993年8月〜1994年10月の間に6回の調査を行った。
6.研究文献
論文名:日本語の外来語のデータベース作成とアクセント核の時間的変化
筆者 :崔絢
内容:
日本語の外来語の音韻的特徴を分析するための外来語データベースを作成し、それを用いてアクセント核の位置の変化を考察した。
まず、アクセントパターンの時間的変化の特徴として、中高型への変化の減少と平板型、頭高型への変化の増加が観察された。さらに、各変化パターンをより細密に検討してみた結果、中高型への変化の減少は頭高型から中高型への変化によるものであり、平板型、頭高型への変化の増加は頭高型から平板型への変化、中高型から頭高型への変化によるものであることが分かった。
また、どう位置の単語が第一次と第二次で連続してアクセントパターン変化を起こした場合を分析し、平板化は不可逆性が高いことが分かった。このようなことは、今回作成したデータベースがさまざまな日本語の音韻的特徴を分析するのに有効であることを示している。今後さらに項目を加えてこれを日本語音声教育の資料として活用したい。
7.研究文献
論文名:英単語の音形日本語化
筆者 :大曽美恵子
研究動機:
カタカナ語の音形は原語の音形にある一定の操作を加え、日本語の音韻体系に合うように変えたもので、操作の基本となるのはなるべく原語を残そうという意識である。そのため、学習者に日本語化の規則を指導する必要がある。
内容:
1.原語の音声による日本語化とスペルによる日本語化を使い分けている。2つの規則にまとめられる。
A.英語の単語でアクセント(強勢)のある音節の母音はその発音に基づいて日本語化する。
B.英語の単語でアクセントのない音節の母音はスペルに基づいて日本語化する。その場合、同じスペルでアクセントがある場合の発音がそのまま使われる。
子音は原則として音声によって日本語化される。
2.開音節化
日本語の音節はほとんど母音で終わる開音節である。そこで英語に多い閉音節には母音を添加して開音節にする。
A.[n]のあとには母音を添加せず、[n]を発音で置き換える。
B.[mp,mb]の[m],[ŋk,ŋg]の[ŋ]は撥音になる。[r]のあとには母音を添加せず、[r]は消え、その前の母音が長母音化する。ただし、[r]前の母音が二重母音の場合は長音化しない。
C.[t][d]の後には[o]を添加する。
D.[tʃ][dʒ]の後には[i]を添加する。
E.その他の子音の後には[u]を添加する。
3.促音の挿入
A.短母音に無声子音[p,t,k,ts,t,tʃ,ʃ]が続く場合、その子音の前に促音が挿入される。
B.短母音に有声子音[d,g,dz,dʒ]が続く場合、その子音の前に促音が挿入されることが多い。
4.日本語にない子音の日本語化
日本語で最も近いと考えられる音によって置き換えられる。
[l]→[r] [Ɵ]→[s] [v]→[b] [f]→[ɸ]
5.日本語にない子音・母音連鎖および半母音・母音連鎖の日本語化
[si]→[ʃ] [zi][dʒ]/ [ʒi] [ti][ti] [di][di] [tu][tu]
[du][du] [dju][dju] [ʃe][ʃe] [dʒe][dʒe]/[ʒe] [wi][ui]
[wu][u] [we][ue] [wo][uo] [ji][i] [je][e]
8.研究文献
論文名:外来語の表記に関する諸問題
筆者 :山名豊美
研究動機:
英語を片仮名で表記する場合、現在のやり方ではうまく表記できないか、あいまいさが残る代表的な問題として、発音記号の[æ]で表される音をどのように表記すべきかという問題と、ラ行を使ってあいまいなまま表記をしている[r]と[l]、さらにハ行[f]と[h]をどのように区別して表記できるかという問題を取り上げて、どのようにすれば外来語として正確にしかも日本語としても自然に表記ができるかということを考える。
内容:
1.[æ]の表記
[æ]の音は口の開きがアとエの中間である。外来語の表記としてはバット(bat),キャット(cat)のように表すことが定着しているが、同じ音を表しているという規則性が見られない。同じ音を表していると分かるように、次のように新たに考えられる2つの方式が挙げられる。
現行 A B
bat バット ベァット バェット
cat キャット ケァット カェット
このように原音に近く、しかも規則的に、表記できているという点では現行のものよりも優れている。さらに現行の表記ではアクセントを保持するために不可欠であった「ッ」の表記も発音上なくてもよくなるので、上記の2つの方式のほうがより自然に感じられる。
2.[l]と[r]の表記
英語のr音の表記としてラ行を用いることに問題はない。理由はフランス語やドイツ語など英語以外の原語には、それぞれ特徴的なr音が存在し、どのような発音であっても、結局のところ、rの異音として認めることができ、日本語のラ行の発音も同様にr音の異音の一つだからである。
一方、[l]の場合には問題がある。英語の[l]を発音するには舌先を強く口蓋に当て、息を舌の両脇から出さなくてはならない。そういった特徴を考慮し、r音との対比を明確に表すことができる表記法として「ル」を[l]の音に対応させ、そのあとに小文字で母音を付加する方法が考えられる。またはラ行の文字の後に小文字で母音を付加するという方法も考えられる。
現行 A B
light ライト ルァイト ラァイト
long ロング ルォング ロォング
3.[f]の表記
日本語には存在しない音にf音があるが、f音の場合はすでに定着している。ここでは「フ」がf音を表し、小文字で母音が表されている。ただし、foodに対しては「フード」という表記が一般的なので、規則性が保たれる「フゥード」という表記法を新たに提案する。
インターネットなどの発達により、これからさらに科学技術をまとめするあらゆる分野の語彙が日本語の中に大量に流れ込んでくるため、これらの語を整然と規則的に表記できるかできないかということは日本語の将来にとって決して軽視すべきでなない問題である。
9.研究文献
論文名:日本語教育のネック−外来語
筆者 :プレム モトワニ
背景(動機・先行研究):
近年日本語の教材の充実化がしきりに行われているが、外来語に関しては今なお妥当な扱いがなされていない。そのため外来語の日本語教育における問題に対する解決方法を考える必要がある。
内容:
外来語の問題は下記のようである。
(1)どの外来語が定着していて、どの外来語が基本語彙から見て不必要であるかの区別の問題。
(2)日本語では和語・看護・外来語が類義語として共存し、微妙に使い分けられる。学習者には理解しにくい。
(3)外来語は日本語の音韻体系に当てはまるよう表記が完全に日本語化されるから、いろいろと分かりにくい面がある。
(4)外来語を短縮する傾向があるが、問題は省略形と非省略形が共存したり、そのどちらかが使われたり、全く規則がない。
(5)多くの外来語が複合語として使われ、単独では日本語として存在しない。別々にしてしまえば,日本語として通じない外来語もある。しかも、多くの複合語は短縮される。
(6)外来語と漢語あるいは和語を組み合わせてできた混種語もたくさんある。混種語の省略形も数多くあって、簡単に見えるがいちいち覚えていくしかない。
(7)日本語に一つの意味を持たせる契合があるので、英語の同じ同系類義語を日本語で表記を変えて別々の意味に使うこともある。
(8)外来語には慣用句的な動詞化の操作がある。この種のものは複雑でいちいち覚えていくしかない。
(9)日本で独自につくられたいわゆる和製英語が多い。英語としてはそのまま通じない。
(10) ローマ字を使う傾向が強まっているため、ローマ字化した外来語が数多くつかられるようになった。
(11) 外来語には、会話でしか使わないものと書き言葉にしか使わないものがある。自然な日本語を書いたり話したりするには、この辺のバランスが非常に大事である。
(12) 新聞、雑誌などにスペースを節約する目的で外来語の特殊な使われ方がある。
解決方法
(1)日本語教育の中で外来語を整理すること。標準語から見て不可欠の外来語をリスト・アップし、定期的にそれを補強していくこと。
(2)教材、参考書の充実化を図ること。
(3)上記の問題を顧みて、今までと全く違ったアプローチからの外来語辞典が必要とされる。
10.研究文献
論文名:日本語における外来要素と外来語
筆者 :玉村文朗
研究動機:
外来語の基本度を考え、日本語教育に適用することは、教育の効果を図る上で重要なことである。外来語がどういう意味分野において増加しつつあるかは、今後の一般語・非専門用語の中の外来語の推移を見る尺度となる。日本語の教育・学習に資するために、巨視的な観点から日本語における外来要素と外来語について考察する。
内容:
1.外来要素の豊富さ
日本語語彙の中には、外部借用によって取り入れられた外来要素が大変多いが、語種別分類では、漢語と外来語が非固有要素となる。
2.外来語の原語
狭義の外来語の原語は、現代雑誌資料では80.8%が英語で、以下フランス語(5.6%)、ドイツ語(3.3%)、イタリア(1.5%)、オランダ語(1.3%)の順にあり、さらにロシア語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、ラテン語と続く。
一方、漢語は現代雑誌資料において異なり語数で47.5%、延べ語数で41.3%を占めている。
統一的な認定基準としては、漢語については(日本漢字音)に限る。この基準からずれて変容している場合は和語、近世以降の音になっている場合は外来語となる。
3.語形
外来要素のうち漢語は字音形態素により構成されるものであるため、基本的には1拍または2拍の造語成分の単体か結合体の形を取る。
漢語は事物・事態を厳密に指示限定する規定力を有していて専門用語・学術用語に頻用されているが、語形が短小である点で優れており、同音率が高い点で話し言葉では伝達性が劣る。
外来語は英語由来のものが多いが、音節構造の違いにより、原語の短小がしばしば長大化することが問題とされる。
4.語義
外来語の語義について特に指摘すべきことは原義よりも意味が狭くなる。名詞相当の資格で日本語に入ることと、語義の特殊化の典型例が見られる。
それに、複合動詞として用いられたりして、英語にない語義・用法が加わることもある。
漢語の中にも、原義と大きな距離を持つ語義に転じたもの、新義を加えたものが少なくない。複合(混種語)形式が縮約されて成立したと考えられるものが多い。
5.意味分布
日本語は外来要素・外来語をすべての品詞・すべての意味分野に均等に受け入れているのではない。名詞以外の品詞になるものは、外来語のほうでは極端に少ない。もともと日本語にあるのに外来語を用いる理由は、外来語は意味の特殊化だからである。もう1つの理由は語の指示対象は変わらないが、語感の違いを新しい外来要素・外来語によって示そうとの志向が働くからである。
形容詞の場合、「自然現象」の分野には外来要素の分布が少なく、「抽象的関係」の分野にもあまり多く分布していない。外来要素の分布は主として「精神および行為」に集中する。
6.位相
漢語動詞、外来語同士の類義語の層さえできている分野もある。これは類義語間では必然的にここの語の持つニュアンス、相互の語感の違いが問題になる。
日本語は和語、漢語、外来語のどちらかに属する。それぞれの語種に属する語が、どのような位相を反映するかということと深く関連している。
7.略語化
略語化の前提条件としては当該語の語形の長大性と頻用という2点がある。
漢語は、漢字の字音形態素を契機として成立しているものであって、造語成分の単位として働きやくい個々の漢字の特徴を最大限に生かした長単位構造のものが少なくない。多くの場合,略語は2拍+2拍の計4拍に圧縮される。
外来語は、省略される傾向が強くなるのが、複合語の場合である。略語の多く原成分の2拍+2拍の計4拍で成り立っている。
8.外来語の基本度
教科書の中の外来語の内容事項の自然さを考慮すると、必ずしも使われる外来語の基本度に従わない。
雑誌用語においても使用度数順が外来語の基本度と合致しない。
語形・語義・文字などを中心にした構造的な特徴と日本人の志向や心理と関わる諸相についてなお考察するべきことである。